Retrieval Augmented Generation(RAG)におけるチャンキング:効率的な文書分割の基本

大きな文書が複数の小さなチャンクに分割され、AIシステムによって整理される様子を表したシンプルなイラスト AI
この記事は約4分で読めます。

RAG(Retrieval Augmented Generation)を使って、AIに関連する情報を検索させたいけど、どうやって文書を準備すれば良いの?」という疑問を抱えている方も多いでしょう。
特に、医療や法務、研究分野でのデータ活用を考える場合、このステップは重要です。
RAGを効率的に活用するために欠かせない「チャンキング(Chunking)」について、基本からわかりやすく解説します。
どのように文書を分割し、検索精度を高めるかを学びましょう。

Retrieval Augmented Generationで文書準備が重要な理由

Retrieval Augmented Generation(RAG)は、あらかじめ学習された言語モデルが外部の文書やデータベースから関連情報を検索し、それを基に応答を生成する技術です。

RAG
RAG

RAG(Retrieval Augmented Generation)のプロセスとその応用:プロンプトとクエリの違い | デイリーライフAI (daily-life-ai.com)

医療分野では、最新の研究データや論文を検索し、それに基づいて診断の助けになる情報を提供することができます。

ただし、膨大な文書をそのままAIに渡すと、いくつかの問題が発生します。

  1. APIの文字数制限
    AIシステムには処理できる文字数に制限があります。
    例えば、診療記録や医療論文が長すぎると、システムが全体を扱いきれず、一部しか処理できないことがあります。
  2. 検索精度の低下
    文書が長すぎたり整理されていなかったりすると、AIが関連性の高い情報を優先的に取得する能力が低下し、検索結果のランク付けが不正確になる可能性があります。
    医療データの中で、重要な部分が埋もれてしまう可能性があります。
  3. ノイズの問題
    ノイズとは、現在の検索や応答に関係ない無駄な情報です。
    例えば、ある病気に関するカルテの情報をAIに検索させる際、無関係な診断や過去の治療記録が混じると、正確な結果が得られなくなります。

こうした問題を解決するために「チャンキング」が役立ちます。

チャンキングで検索性能を向上させる仕組み

チャンキングとは、文書を小さな「チャンク」に分割するプロセスです。
これにより、次のような利点が得られます。

  1. APIの制限に対応
    チャンクに分割することで、文書の構造を保ちながら、AIが効率的に情報を検索できるサイズに調整することができます。
    例えば、1つのチャンクを500文字にすれば、システムの文字数制限を超えることなく送信できます。
  2. 検索精度の向上
    分割されたチャンクは、関連性の高い情報のみを含むため、AIが検索する際に無駄な部分を避けられます。
    例えば、医療カルテで特定の病状に関連する情報だけを含むチャンクを検索し、診断に無関係な過去の情報を排除できます。
  3. ノイズが減る
    ノイズが少なくなることで、AIは重要な情報を正確に見つけやすくなります。
    例えば、論文の中で特定の結果部分だけを含むチャンクを作ることで、余計な背景情報を避けることができます。

効率的なチャンキング手法:どのように分割すべきか

では、具体的にどのように文書を分割すれば良いのでしょうか?いくつかの手法を紹介します。

1. 文字数や単語数による分割

文字数や単語数に基づいて機械的に分割します。
この方法は簡単ですが、文脈や意味が無視されるため、単純な情報や短文に向いています。
単純な検索が求められる場合には有効ですが、複雑な文脈を必要とする場合には他の手法を選ぶべきです。

具体例
診療記録が5,000文字ある場合、それを500文字ごとに分けて10個のチャンクに分割することができます。
これにより、各チャンクはAIが処理しやすいサイズになります。

2. 段落や章ごとに分割

文書構造に基づいて分割します。
医療レポートでは、イントロダクション、方法、結果、結論といったセクションで区切られることが多く、それぞれをチャンクに分けると効率的です。
これにより、文脈が自然に保たれた状態で情報を処理できます。

具体例
ある医療研究論文がイントロダクション、方法、結果、結論の4つのセクションに分かれている場合、それぞれを独立したチャンクとして扱うことで、AIは各セクションごとの情報を正確に理解し、検索の精度が向上します。

3. 意味的なまとまりを考慮した分割

AIは自然言語処理(NLP)技術を活用し、限定された意味理解に基づいて文書を意味的に分割する手法です。
例えば、医療記録の中で、特定の治療経過や症状に関連する記述を一つのチャンクにまとめます。
これにより、関連する情報を一つのまとまりとして抽出でき、検索精度が大幅に向上します。

具体例
診療記録の中で、特定の疾患(たとえば糖尿病)の治療経過に関連する情報をひとまとめにすることで、その情報だけを効率的に抽出し、他の無関係な部分を無視できます。

まとめ

RAGシステムを効率よく活用するためには、文書を整理し、適切に分割する「チャンキング」が重要です。
チャンキングを行うことで、不要な情報を削減し、重要なデータに焦点を当てることができ、結果として検索結果の正確さと信頼性を向上させることが求められます。
今回紹介した3つの手法を使えばチャンキングを実践できます。
これを機に、RAGを活用してより良いデータ検索と活用の環境を作り上げていきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました