医療現場でAIを活用するにあたって、どのようなAIモデルを選べばよいのか、迷っていませんか?
近年、大規模言語モデル(LLM)は、文章生成や質問応答の精度が飛躍的に向上し、医療分野でも注目されています。
しかし、LLMには「非公開モデル」「API提供モデル」「公開モデル」の3つの種類があり、それぞれに異なる特徴と使い方があります。
本記事では、AI・機械学習の初学者向けに、これらのモデルの違いと、医療現場での具体的な活用方法についてわかりやすく解説します。
LLMとは? 医療現場での活用を考える
LLM(大規模言語モデル)とは、膨大なデータを学習し、その結果として人間のように自然な言語を生成したり、質問に答えたりできるAIです。
たとえば、診療記録を自動で要約したり、患者さんの質問に答える医療用チャットボットなどに活用されています。
AIにはたくさんの種類がありますが、LLMはその中でも自然言語処理と呼ばれる分野で特に優れており、医療文書の管理や、質問応答システムなどで力を発揮します。
しかし、LLMを医療現場で活用するためには、「どのようにアクセスできるか」が重要です。
これがアクセシビリティ(利用のしやすさ)です。
アクセスの方法は、利用するモデルの種類によって大きく変わります。
非公開モデル・API提供モデル・公開モデルの違いを理解しよう
LLMは、その利用範囲や提供方法に応じて、主に次の3種類に分けられます。
ここでは、それぞれの特徴を具体的に見ていきます。
1. 非公開モデル
非公開モデルとは、企業や特定の研究機関だけが利用できるモデルです。
例えば、PaLM(Google)やGopher(DeepMind)がその代表例です。
これらは、一般的には限られたアクセスしかできませんが、企業との提携や研究機関を通じて利用されることがあります。
ただし、一般的な医療機関での直接利用は難しい状況です。
これらのモデルは、主に最先端のAI研究や大規模なデータ解析に利用されることが多く、将来的に医療分野での活用も期待されていますが、その具体的な利用方法は公開されていません。
これにより、医療分野においても新しい診断方法や治療法の開発に役立つ可能性があります。
2. API提供モデル
次に紹介するのが、API提供モデルです。
API(Application Programming Interface)というのは、簡単に言えば、「他のソフトウェアからこのAIを利用できるインターフェース(窓口)」です。
モデル自体の詳細(仕組みやデータ)は非公開ですが、APIを通じて外部のプラットフォームを通じて利用できるのが特徴です。
代表的なモデルには、GPT(OpenAI)やGemini(Google)があります。
これらのモデルは、APIを通じてアクセスできるため、例えば診療補助アプリケーションに組み込むことで、患者との対話をサポートしたり、医療記録を自動生成することができます。
既存のシステムやアプリに簡単に組み込むことができるので、非常に手軽です。
たとえば、診療の補助として医師と患者の対話をサポートするアプリケーションや、医療記録の自動生成にAPI提供モデルが活用されていますが、正確な記録を残すためには人間による監督や確認が必要です。
また、こうしたシステムはクラウド上で稼働していることが多いため、機密性の高い医療データを扱う際には、セキュリティがしっかりしているプロバイダーを選ぶことが重要です。
API提供モデルを利用する際には、データがクラウドに送信されることが一般的ですが、セキュリティやプライバシーの要件に応じて、ローカル環境やプライベートクラウドを選択することも可能です。
医療データを扱う場合、セキュリティ対策は必須
API提供モデルや公開モデルを利用する際は、データの送信先や保管場所のセキュリティに十分注意しましょう。
暗号化やセキュリティフレームワーク(ISO 27001)への準拠、日本の個人情報保護法や医療情報システム安全管理ガイドラインを確認することが重要です。
具体的な利用例として、診療前に患者が書いた問診票をもとに、GPTが診断候補を提示するシステムなどがあります。
APIを使うことで、最新のAI技術を手軽に医療現場に取り入れることができ、コストも抑えられる点が魅力です。
3. 公開モデル
公開モデルとは、モデル自体の「重み」(AIが学習した結果やパラメータ)まで公開されているものです。
これにより、ユーザーが自由にダウンロードしてカスタマイズや再学習を行うことができます。
具体例としては、Llama(Meta)やFalcon、Mistralなどが挙げられます。
公開モデルは、カスタマイズ性が高く、医療機関が独自に患者データを用いて再学習を行ったり、特定の疾患に特化したモデルを作ることが可能です。
これにより、より専門的な診断支援ツールを開発することができます。
たとえば、Llamaモデルをベースにして、特定の病院が自院の患者データを使って独自のAI診断システムを構築することが可能です。
また、公開モデルは、外部のAPIに依存しないため、医療データを院内で管理できる点がメリットですが、適切なセキュリティ対策を講じなければ、依然としてリスクが残るため注意が必要です。
運用する側がセキュリティ対策をしっかりと行い、データの安全性を確保することが求められます。
公開モデルを利用するには、ある程度の技術知識が必要ですが、医療現場でカスタマイズされたAIを作りたい場合には強力な選択肢です。
どのLLMを選ぶべき?医療従事者向けモデル活用ガイド
医療従事者がどのLLMを選ぶべきかは、使いやすさと目的によって変わります。
以下のポイントを考慮して選んでみましょう。
手軽さを重視する場合: API提供モデル(GPTやGeminiなど)
すぐに使えるツールが必要な場合は、API提供モデルが最適です。
例えば、医療チャットボットや問診票の自動解析システムを利用したい場合は、GPTやGeminiのAPIを通じて手軽にAIの力を活用できます。
プログラミングの知識がなくても、既存のサービスを利用するだけで済みます。
カスタマイズが必要、セキュリティを重視する場合: 公開モデル(Llama、Falconなど)
独自のAIシステムを作りたい、またはデータを外部に出したくない場合は、公開モデルがおすすめです。
LlamaやFalconのような公開モデルを使えば、セキュリティ面での安心感を持ちながら、自院のデータに特化したAIツールを開発することができます。
最先端技術に興味がある場合: 非公開モデル(PaLM、Gopherなど)
もし研究や技術開発に携わる立場であれば、非公開モデルに関心を持つかもしれません。
最新の技術を研究する大学や大手医療機関が使うモデルですが、一般の病院での利用は難しいため、パートナーシップや研究プロジェクトを通じての利用が主な方法になります。
まとめ
モデル | 特徴 | 利用例 | デメリット |
---|---|---|---|
非公開モデル | 限定されたアクセス、最先端のAI研究向け | 新薬開発、データ解析 | 一般の医療機関では利用困難 |
API提供モデル | 簡単に利用可能、セキュリティ対策が必要 | 医療チャットボット、診断支援 | データがクラウドに送信される場合が多い |
公開モデル | カスタマイズが可能、データを院内で管理可能 | 独自AIシステム構築、特定疾患の支援 | 運用には技術知識が必要 |
LLM(大規模言語モデル)は、医療現場での活用に大きな可能性を秘めていますが、利用のしやすさや目的に応じて「非公開モデル」「API提供モデル」「公開モデル」と3つに分類されます。
手軽に使いたい場合はAPIモデル、データセキュリティが重要な場合やカスタマイズが必要な場合は公開モデルが最適です。
どのモデルが自分の医療現場に適しているかを理解して、AI技術を効果的に活用しましょう。
AIは、今後さらに医療の効率化を進める可能性があります。この記事を参考に、あなたの業務に役立つAIモデルを選んでください。
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