自然言語処理や生成AIを理解するうえで、「文章がどのようにAIに読み込まれているのか」を知ることは非常に重要です。
ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、文章をそのまま理解しているのではなく、まず文章を「トークン」と呼ばれる小さな単位に分割して処理しています。
その代表的な手法の一つが、Byte Pair Encoding(BPE)です。
BPEは、単語を丸ごと覚えるのではなく、よく出てくる文字列やサブワードを効率よく扱うためのトークン分割手法です。
この記事では、BPEの仕組み、メリット、医療データやLLMでの活用イメージ、注意点を初学者向けにわかりやすく解説します。
Byte Pair Encoding (BPE) とは?
BPEを一言でいうと、よく一緒に出てくる文字や文字列の組み合わせを、少しずつ一つのトークンとしてまとめていく方法です。
例えば、医療文書では「抗菌薬」「抗がん薬」「副作用」「腎機能」「高血圧」「糖尿病」など、専門用語や複合語が頻繁に登場します。
これらをすべて未知の単語として扱うのではなく、意味のまとまりに近いサブワードへ分けて処理できると、AIは専門用語を扱いやすくなります。
ただし、BPEは人間が考える医学的な意味を完全に理解して分割しているわけではありません。
あくまで、データ内でよく出現する文字列のパターンをもとに、効率よくトークン化するための手法です。
歴史と背景
BPEはもともとデータ圧縮技術として提案されましたが、近年では自然言語処理(NLP)の分野で広く使われるようになりました。
特に、翻訳モデルやテキスト生成モデルなど、大量のテキストデータを扱う場面でその効果が認められています。
なぜBPEが必要なのか
BPEの主な目的は、テキストデータを効率的にトークン化することです。
例えば、英語のような言語では、単語の数が非常に多いため、すべての単語を個別に学習するのは非効率です。
BPEを使うことで、共通する部分(サブワード)を再利用できるため、効率的な学習が可能になります。
医療分野では、この問題がさらに重要になります。
薬剤名、疾患名、検査項目名、略語、英語表記、日本語表記が混在しやすいためです。
例えば、同じ医療文書の中に「糖尿病」「DM」「diabetes mellitus」のような表現が混在することがあります。
また、薬剤名や検査名には、一般的な日常語にはあまり出てこない文字列も多く含まれます。
このような専門用語をAIで扱うには、文章を適切な単位に分けるトークン化が欠かせません。
BPEは、未知語や専門用語をサブワードに分けて扱えるため、医療文書や研究論文などの自然言語処理でも重要な考え方になります。
BPEの仕組みとそのメリット
BPEのアルゴリズム詳細
ここでは英単語の例で説明しますが、考え方は日本語や医療用語にも応用できます。
BPEは、最初から「正しい医学用語の区切り」を人間のように理解しているわけではありません。
大量のテキストの中で、よく一緒に出てくる文字やサブワードの組み合わせを繰り返し結合していくことで、効率よく語彙を作っていきます。
BPEは以下のステップで動作します:
- 初期化
すべての単語を文字単位に分割します。例えば、単語「lower」は「l」「o」「w」「e」「r」に分割されます。 - 頻度計算
単語リストの中で出現する文字ペア(隣接する2文字)の頻度を計算します。
例えば、単語「lower」ではペア「l」と「o」、「o」と「w」、「w」と「e」、「e」と「r」の出現頻度を数えます。 - 置換
最も頻度の高いペアを1つの新しいトークンに置換します。
例えば、「l」と「o」を「lo」に置換します。 - 繰り返し
ステップ2と3を指定回数繰り返し、頻度の高いペアをどんどん結合していきます。
この過程で、より長いトークンが徐々に形成され、最終的に効率的なトークン分割が完了します。
具体的なステップバイステップの説明
具体例を挙げて説明します。例えば、「lower」、「lowest」、「newer」という3つの単語があるとします。
- 初期化
- lower: l o w e r
- lowest: l o w e s t
- newer: n e w e r
- 頻度計算
- 頻度の高いペアを計算します。
- 置換
- 最も頻度の高い「l」と「o」を「lo」に置換します。
- lower: lo w e r
- lowest: lo w e s t
- newer: n e w e r
- 繰り返し
- 同様に繰り返していくと、より大きなトークンが生成されます。
例えば医療文書で「抗」「菌」「薬」という文字が頻繁に連続して出る場合、学習データの中で「抗菌」「抗菌薬」のようなまとまりがトークンとして扱われやすくなる可能性があります。
このように、BPEは専門用語を完全に辞書登録していなくても、頻出するパターンをもとに分割・結合できる点が特徴です。
他のトークン分割手法との比較
BPEと似た考え方を持つ手法として、WordPieceやSentencePieceがあります。
これらも、単語を細かいサブワードに分けることで、未知語や専門用語に対応しやすくするための手法です。
特に医療データでは、薬剤名、疾患名、略語、英語と日本語の混在などが多いため、どのトークン化手法を使うかが精度に影響します。
WordPieceやSentencePieceとの違いについては、関連記事「医療データにも活用する自然言語処理: WordPieceとSentencePieceの基礎解説」でも解説しています。
BPEのメリット
- 効率的な圧縮: データの圧縮率が高い。
- 適応性: 未知語に対しても柔軟に対応可能。
- 簡便さ: 実装が比較的簡単である。
BPEの応用例
BPEを使った具体的な応用例
- 翻訳モデル
BPEは多くのニューラル翻訳モデルで使用されています。
例えば、英語から日本語への翻訳において、未知の単語に対する柔軟な処理が可能です。 - テキスト生成モデル
GPT-3などの大規模言語モデルでもBPEが使われており、自然なテキスト生成に寄与しています。
自然言語処理の基本用語を試験対策として覚えたい方には、AI音楽で学べる「覚えうた」シリーズも用意しています。
特にG検定の技術分野では、BoW、TF-IDF、n-gram、word2vec、BERT、GPT、LLM、形態素解析、NLP評価指標など、自然言語処理の重要キーワードをまとめて学べます。
関連して学びたい方は、以下の記事も参考にしてください。
・AI音楽で覚えるG検定〖技術分野〗まとめ
・自然言語処理の覚え方!「古典的テキスト表現覚えうた」
・自然言語処理の評価指標(BLEU・ROUGE等)の覚え方!NLP評価指標覚えうた
BPEの限界とその対策
BPEにも限界があります。
例えば、頻繁に使われるサブワード(小さな単位)に細かく分割されすぎると、意味が曖昧になる場合があります。
また、言語によっては適用が難しいこともあります。
この問題を解決するために、Byte-Level BPE(バイトレベルのBPE)やSentencePieceなどの改良版が提案されています。
バイトレベルのBPEは文字単位ではなくバイト単位での処理を行い、SentencePieceは文全体を考慮してトークン分割を行います。

実際のプロジェクトでのBPEの利用方法
実際のプロジェクトでは、データの前処理段階でBPEを適用します。
大量のテキストデータをBPEで処理することで、モデルの学習効率が向上します。
まとめ
Byte Pair Encoding (BPE) は、自然言語処理における効率的なトークン分割手法の一つです。
BPEの基本的な仕組みやそのメリット、実装方法について理解することで、テキスト処理の効率を大幅に向上させることができます。
BPEを使うことで、未知の単語にも柔軟に対応でき、さまざまな自然言語処理プロジェクトで効果を発揮します。
初心者の方も、この記事を参考にBPEの基礎をしっかりと身につけ、実際のプロジェクトに活用してみてください。


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