Ashish Vaswani et al. (2017) “Attention Is All You Need” NeurIPS 2017 より引用し,一部改変
自然言語処理で革命を起こしたトランスフォーマーモデル。
その中核をなす「Encoder」の構造について、特に「Multi-Head Self Attention」と「Position-wiseな全結合層」の仕組みを初学者向けに分かりやすく解説します。
この記事を読めば、これらの重要なコンセプトが理解できるようになります。
Multi-Head Self Attentionの仕組みと役割
Self Attentionの基本概念
Self Attentionは、入力シーケンス内の各位置における要素同士の関連性を計算します。
具体的には、Query、Key、Valueのベクトルを用いて、各位置のQueryが他のすべての位置のKeyと内積を計算し、そのスコアをソフトマックス関数で正規化した重みをValueに適用します。
複数のAttentionヘッドを持つ理由とその利点
Multi-Head Self Attentionでは、複数の「ヘッド」が並列で動作します。
各ヘッドは異なる部分に注意を向けることができるため、より多様な情報を同時に処理できます。
例えば、一つのヘッドは単語の意味に注目し、別のヘッドは文法構造に注目する、といった具合です。
計算の流れと各ステップの詳細説明
- 入力データの変換: 各単語をベクトルに変換します。ベクトルとは、数値の並びで単語を表現したものです。
- 関連度の計算: 各単語のQueryと他のすべての単語のKeyの内積を計算し、その結果をKeyの次元数の平方根で割ります。その後、ソフトマックス関数を適用して正規化します。これが「注意スコア」となります。
- 重み付け平均: 注意スコアを使って、各単語の情報を重み付けしながら平均します。これがSelf Attentionの出力です。
- 複数ヘッドの結合: 各ヘッドの出力を結合し、最終的な出力を得ます。
実際のEncoderでの役割と応用例
Encoder内では、Multi-Head Self Attentionが入力データ(例えば、文章の単語)間の関係を理解し、それを基に新しい表現を生成します。
これにより、モデルは文脈や意味をより深く理解できます。
例えば、翻訳モデルや要約生成モデルで効果を発揮します。
Position-wiseな全結合層の詳細解説
全結合層の基本概念
全結合層(Fully Connected Layer)は、ニューラルネットワークの一部で、入力データを重み付けして出力に変換します。
Position-wiseな全結合層は、各位置の埋め込みベクトルに対して個別に適用されます。
つまり、文中の各単語に対して同じ重み行列を用いて線形変換を行い、その結果に活性化関数(通常はReLU)を適用します。
各位置ごとに適用される理由
Position-wiseな全結合層では、各単語の情報を独立して変換します。
これにより、各単語の情報が他の単語と独立して処理され、より効果的な特徴抽出が可能になります。
計算が並列化され、モデルの効率性が向上します。
前処理としてのSelf Attentionとの関係
Self Attentionが文中の単語間の関連性を捉えるのに対し、Position-wiseな全結合層はその関連性をさらに処理し、より高次の特徴を抽出します。
これにより、モデル全体の性能が向上します。
モデルの出力に与える影響と役割
Position-wiseな全結合層は、Self Attentionで得られた情報を整理し、次の層に渡します。
これにより、モデルはより精度の高い予測を行えるようになります。
Encoder全体の流れと役割
Encoder全体のアーキテクチャの概要
Encoderは、Self AttentionとPosition-wiseな全結合層が交互に配置された層で構成されています。
これにより、入力データの複雑な特徴を効果的に抽出します。
Self Attentionと全結合層の相互作用
Self Attentionが入力データの関連性を捉え、Position-wiseな全結合層がその情報を整理し、次の層に渡します。
この繰り返しにより、モデルは入力データの高次の特徴を学習します。
入力から出力までのデータフロー
- 入力データのエンベッディング: 単語をベクトルに変換します。
- Self Attentionと全結合層の繰り返し: 各層でSelf Attentionと全結合層を適用し、特徴を抽出します。
- 最終出力: 最終的な特徴ベクトルを出力し、次のデコーダーに渡します。
Encoderの実際の応用例とその重要性
Encoderは、翻訳、要約、質問応答など、さまざまな自然言語処理タスクで重要な役割を果たします。
Encoderで抽出された特徴は、これらのタスクで高精度な予測を行うための基盤となります。
まとめ
トランスフォーマーモデルのEncoderは、Self AttentionとPosition-wiseな全結合層を駆使して、入力データの複雑な特徴を効果的に抽出します。
特に、Multi-Head Self Attentionは入力データの文脈や意味を理解する上で非常に重要な役割を果たし、Position-wiseな全結合層はその情報をさらに整理し、モデル全体の性能を向上させます。
これらの仕組みを理解することで、自然言語処理タスクにおけるトランスフォーマーモデルの強力さを実感できるでしょう。
(Reference)
Ashish Vaswani et al. (2017) “Attention Is All You Need” NeurIPS 2017
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